ヒーローからヒーラーへ(注:本文中のリンクは著者引退につき現在無効です)

呼び込み型のリーダーシップ

Inviting Leadership

私が TEDx トークで紹介した新しい 5 つの戦略はいずれも、人々を呼び込む要素を含んでいます。つまり人々に、共有された価値観と共通の目的を持ったプロセスに一緒に参加することを勧めるわけです。そこではリーダーは「ヒーロー」であるよりは「ホスト」で、主導権を握ったり、闘争を戦ったり、解決策を押し付けたりよりは、プロセスの参加を促すわけです。

この、抵抗のない空間を作り出し保持するには、目的を明確にすることと、自分の立場をわきまえることと、できる限り自分のエゴを抑えることが必要になります。この活動で持たされる最大の価値は、思いやりで、そこには、共感、無判定、慈悲、この世界の苦難を解消したいという強い思いが含まれます。

このような形のリーダーシップは、ダライ・ラマ猊下が、同郷のチベット人を投獄し、拷問し、殺害した中国の兵士に対する態度を尋ねられた時、身を以て示されたものです。猊下は、「私たちは勇気を持って、これらの行いによる被害を訴えなければならないが、それと同時に、私たちは、一連の行為を行なった兵士の苦悩に対しても、深い思いやりを持たなければならない。」とおっしゃいました。

この本は、自伝として書かれたものではありません。自分の経験について語るのは、私の学んだ内容を具体的に示すためであって、私自身の物語を宣伝するためではありません。コミュニティでの私たちの活動は、多くの尊敬すべきリーダーとの協力で行われています。ですから、その協働のプロセスから生まれた知見は、私自身のアイデアや専門知識によるものではありません。

あとから振り返ってみることで、私たちは、教訓を見つけ、何らかの知見を得ます。しかしながら、私は、自分たちが事前に自分のやっていることがわかっていたような印象を与えたくはありません。私たちは、自分たちの価値観や、直感や、経験に導かれていましたが、実際の出来事は、乱雑で混乱した形で起こり、進展は苦労してやっとの事で得たものでした。あらゆる形の社会の変革は、つねにそのように起こるものです。もし、私たちが今自分たちが知っていることを当時知っていたならば、私たちが犯した多くの間違いは避けられたはずです。それでは、5 つの教訓を順番に見ていきましょう。