ヒーローからヒーラーへ(注:本文中のリンクは著者引退につき現在無効です)

連携からすべてが始まる

Connection Is Everything

私たちはどうして私たちは社会運動家、環境運動家になったのでしょう。それはより良い世界を築くためです。

より良い世界には、力を合わせてみんなが働く、親切で、思いやりがあり、創造的で、包容力がある一方、貧困や、不平等や、不利な立場や、暴力で引き裂かれていない、コミュニティがあります。前者の価値観は全て連携を伴うものであり、後者の価値観は分裂を伴うものです。

より良い世界では、人間は自然と調和して、持続性のある生活をし、私たちの大地や、川や、森林や、海を破壊しません。より良い世界では、有機農法や非収奪農法を用いてすべての市民に十分な食料を共有します。工業化された農法で企業を儲けさせてながら貧しい人をより貧しくしたりはしません。

より良い世界では、すべての国々が協力して、再生可能なエネルギーを開発し二酸化炭素の排出を減らします。埋蔵された化石燃料を巡って争ったりはしません。

こうして見ていくと、より良い世界を築く方向はすべて連携を深めることであって、私たちの世界に害を与える方向はすべて分裂を伴うものです。振り返って見ると、これは当たり前のように思えます。しかし、この原則は、活動家が、キャンペーンや闘争を企画する時には無視しているものです。

TEDx トークでも、私は「分裂を伴う行動はすべて私たちのより良い世界を築く目的を打ち消してしまう一方で、私たちを連携させる行動は全て変革の力を持ちます。」と締めくくっています。この結論は、未来を見通しての分析から浮かび上がったものではなく、今までの変革の戦略のなかで、有効だったもの、有効でなかったものを分析した結果から割り出したものです。このパターンは TEDx トークを準備する中で、図示してみて初めて明らかになったものです。

連携の重要性が、より良い世界の様子を記述する時にも、そのより良い世界を築くのに必要なリーダーシップを記述する時にも、現れるのは偶然ではありません。伝統的な叡智の多くが、うまくいくリーダーは、自分が実現したい変化を、身をもって示さなければならないことを教えています。マザー・テレサは「私は反戦を掲げて行進をすることはありませんが、平和を求める集会がある時には、そこに私はいます。」と語っています。

ここに強い教訓があります。私たちは十年にもわたって結果に失望する繰り返しの後、人々を引き裂くのではなく、人々を引き合わせる戦略を採用した時に初めて成功したのです。

私が思うに、気象変動を防ごうとして、石油業界と戦うのは無益なことです。石油会社は、自分たちの利益のために戦うのに無尽蔵の資金を持っています。石油会社は各国政府から補助金や減税や、水質浄化や飲料水の安全などの環境保護のための法律の例外で支援されています。

石油会社に反対する行動は、石油会社に自分たちを守るための行動を取らせます。ハッフィントンポストは 2016 年 4 月に、「巨大石油会社は、気象変動防止政策に反対するために年間 1 億 1500 万ドルも使っている」と報じました。それにくらべて、グリーンピース・インターナショナルは 2015 年に、気象変動とエネルギーに関するキャンペーンに、わずか 450 万ドルを使っただけです。

もし、私たちが、石油会社と争う努力をすべてやめて、自分たちの情熱やお金を代替エネルギーの開発と使用に注いだらどうでしょう。たとえば、もし通勤者が車を家において、職場に電気自転車で通勤したらどうでしょう。再生可能エネルギーが化石燃料よりも安くなった瞬間には、実際、価格の傾向はその転換点に急速に近づいてきていますが、石油会社は勝手に瓦解するのです。

私たちの正当な怒りを表明して、表通りを更新するのは気分の良いものですが、私は、環境団体は、自分たちの行う反対運動戦略やキャンペーンや闘争において、深刻な判断ミスをしているのではないかと疑問に思っています。関心を高めるには、肯定的な変化を後押しする、大掛かりなイベントを行うほうが、もっといいやり方でしょう。

Hearts in Healthcare (医療に心を)運動では、医療機関を改革しようとすることは諦め、コンサルティングの仕事は丁重にお断りしています。その代わりに、私たちは個々の医療職を支援し、問題への関心を高め、経営陣が自分たちの世界観を入れ替えるのを促しています。私たちの将来の活動として目指しているのは、健康なコミュニティを築き、ブウルツォルグのような思いやりと連携の価値観に基づいた新しい医療機関が自然に生まれてくる触媒の役割を果たすことです。